PROJECTS

ERATO 河原林巨大グラフプロジェクト
河原林 健一
国立情報学研究所教授
プロジェクト概要
インターネットのWeb構造や、Facebook、Twitterなどのソーシャルネットワークに代表される巨大なネットワークは、各々109(10億人)に近いユーザーが利用し、現代社会に欠かせない存在となっています。これらのネットワークは年々急速に膨張し、近い将来には1010を超えるサイズになると予想されています。
ネットワークの膨張に伴う情報量の増大はハードウェアの進歩を上回る速さで進んでおり、いわゆる「ビッグデータ」の中でも特に巨大な、1010以上のサイズのネットワークに対しては、現行のアルゴリズムでは実用的な速度で情報を解析することが不可能であり、高速アルゴリズムの開発が急務となっています。
このような背景のもと、本プロジェクトでは、巨大なネットワークを膨大な点と辺の接続構造、すなわち1010以上の頂点を持つ「巨大グラフ」として表現し、理論計算機科学や離散数学などにおける最先端の数学的理論を駆使してそれを解析する、高速アルゴリズムの開発を目指します。

革新知能統合研究センター(AIPセンター)
杉山 将
理化学研究所センター長 / 東京大学教授
プロジェクト概要
革新知能統合研究センターは、文部科学省が推進する「人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリテ統合プロジェクト」事業の研究開発拠点として2016年4月に設置されました。
当センターでは、革新的な人工知能技術を開発し、科学研究の進歩や実世界応用の発展に貢献することを目指します。また、人工知能技術の普及に伴って生じる倫理的・法的・社会的問題に関する研究や、人材育成も行います。

ACT-I 研究領域「情報と未来」
後藤 真孝
ACT-I研究総括 / 産業技術総合研究所首席研究員
プロジェクト概要
ACT-I研究領域「情報と未来」では、情報学における研究開発によって未来を切り拓く気概を持つ若手研究者を支援するとともに、新しい価値の創造につながる研究開発を推進します。情報学に関わる幅広い専門分野において、新しい発想に基づいた挑戦的な研究、今後の学術・産業・社会・文化を変えていくような多種多様な研究を、若手研究者が個を確立しながらいかに推進するかが重要だと考えています。
研究推進においては、未来開拓型の研究開発、価値創造型の研究開発を募り、本研究領域で若手研究者同士がお互いに切磋琢磨し相互触発する場を設けることで、未来社会に貢献する先端研究を推進する研究人材の育成や、将来の連携につながる研究者同士の人的ネットワーク構築を促していきます。それによって、ひときわ輝き存在感のある研究者がより一層増え、ひいてはより良い未来社会が切り拓かれることに貢献します。

ERATO 蓮尾メタ数理システムデザインプロジェクト
蓮尾 一郎
国立情報学研究所准教授
プロジェクト概要
今日の製造業においては、高度な情報処理技術を用いた自動化とソフトウェア支援により、設計から生産に至る工程の様相を根本的に変える取り組みが進んでいます。
この背景のもと、本プロジェクトでは従来のものづくり技術にソフトウェア科学の成果を導入し、仕様策定から設計、実装、保守まで工業製品開発のさまざまな側面を支援するソフトウェア・ツールの構築を目指します。
具体的には、「形式手法」というソフトウェア科学における数学を基盤としたシステム設計の技法を取り込むことにより、製品の品質保証や効率化へのソフトウェア支援を大きく推進します。工業製品の開発に形式手法を適用するには、物理系の連続ダイナミクスや確率・時間などの連続的要素を包含するように形式手法を拡張することが必要です。
この理論的困難に対する独自のアプローチとして、形式手法の拡張の過程そのものを数学的に解析し、高次(メタレベル)の理論を構築することで、形式手法の諸技法を一挙に拡張します。
以上の成果を自動車業界など産業界の各分野に展開を図る予定です。
また同時に、ソフトウェア科学や制御理論を包括する新たな理論体系の構築を通じて、数学一般に対する学術的貢献をめざします。

基盤(S) 離散構造処理系プロジェクト
湊 真一
北海道大学教授
プロジェクト概要
論理関数や組合せ集合などの離散構造を表す大規模データを計算機上にコンパクトに表現し演算処理を効率よく行う技法は、計算機科学の様々な応用分野に共通する基盤技術として非常に重要であり、現代社会に対する大きな波及効果を持ちます。研究代表者の湊は過去6年間に渡りJST ERATO湊離散構造処理系プロジェクトの研究総括を務め、ZDD(Zero-suppressed BDD; ゼロサプレス型二分決定グラフ)をベースとした離散構造処理系の研究開発とその工学的応用に取り組んできました。列挙・圧縮・索引化の技法と融合させた超高速・大規模な離散構造の演算処理は、世界的にも先駆的な技術であり、実用レベルでも十分通用する性能を有していることから、多くの関連研究者による応用分野の研究プロジェクトへの発展に成功しつつあります。これらの研究活動を引き継ぎ支えるために、離散構造処理系のコアとなる部分に研究者が集まる「場」を継続的に提供し、競争力の源泉となるアイデアを醸成し続けることが本プロジェクトの目的の1つとなっています。

内田 誠一
基盤(S) 機械可読時代における文字科学の創成と応用展開
内田 誠一
九州大学主幹教授
プロジェクト概要
「文字」は我々の文化的活動やコミュニケーションを支える最重要メディアです。本研究では、「言語であり画像でもある」という文字の二面性に注目しながら、文字の持つ多様な機能の本質を総合的に解析する新分野「文字科学」を推進します。特にこれまで注目されることのなかった文字の4機能(周囲の明確化、知識・意味伝達、雰囲気伝達、可読性維持)について唯一無二の基礎的研究群および応用展開研究群を実施する予定です。これらの研究は、機械学習の深化とデータの大規模化によって文字が機械可読になった今だからこそ実施可能になったものです。この好機を活かし、我々の身の回りの存在するあらゆる文字情報を計算機の俎上に載せ、綿密なる解析を行うことで、「文字にしかできない」諸機能の解明を目指しています。

CREST 知識に基づく構造的言語処理の確立と知識インフラの構築
黒橋 禎夫
京都大学教授
プロジェクト概要
テキストは、専門家によるデータの分析結果や解釈、ステークホルダーの批判・意見、種々の手続きやノウハウなどが表出されたものであり、人間の知識表現の根幹をなすものです。言語の計算機処理はウェブをはじめとする大規模テキストの活用によって長足の進歩を遂げつつありますが、本研究ではこれをさらに発展させ、知識に基づく頑健で高精度な構造的言語処理を実現し、これによって様々なテキストの横断的な関連付け、検索、比較を可能とする知識インフラを構築します。
また、構築した注釈付与コーパス、辞書、言語解析システムの公開によって研究コミュニティによる一層の研究の加速を実現するとともに、これらの研究成果を企業のカスタマセンター業務等の社会の実問題に適用し、その有用性を評価します。

CREST 自己情報コントロール機構を持つプライバシ保護データ収集・解析基盤の構築と個別化医療・ゲノム疫学への展開
佐久間 淳
筑波大学教授
プロジェクト概要
ビッグデータの継続的な収集蓄積とその解析は、様々な社会上の問題解決の強力なツールとなりつつあります。一方個人情報を含むビッグデータは、プライバシの保護の問題のために、現状では十分な利活用されているとは言えません。近年、複数の情報源から得たデータによるデータ解析において、お互いにデータを秘密にしたままデータ解析を可能にする秘密計算の技術が発展し、プライバシ保護とデータ解析の両立が可能になりつつあります。このプロジェクトでは個人情報が常に暗号化されたまま復号せずにデータ解析することでプライバシを保護するプライバシ保護データ収集・解析基盤の開発を目的としています。
本プロジェクトでは、自己情報コントロールを保証した暗号系によるプライバシ保護データの収集と解析のための計算基盤を構築します。自己情報コントロールの保証とは、「データを外部に見せない」ことのみをもってプライバシの問題を解決するのではなく、「個人毎に」「後からいつでも」「誰のデータを解析できるのか」「誰がデータを解析できるのか」「いつからいつまでデータを解析できるのか」「データはどんな経路で流通するのか」といった要件がコントロール可能であることを加えて保証することで、プライバシの問題を解決するアプローチです。
また本プロジェクトでは、「究極の個人情報」と呼ばれる個人ゲノムを提案基盤の中核的な応用領域と定め、基盤技術構築と個別化医療・ゲノム疫学における実証応用を同時に推進します。

宇野 毅明
CREST データ粒子化による高速高精度な次世代マイニング技術の創出
宇野 毅明
国立情報学研究所教授
プロジェクト概要
データから適切な抽象度を持った特徴・構造を網羅的に取り出し、複雑で巨大なビッグデータをシンプルで明確で小さいデータに変換する手法を開発します。機械学習などのデータ解析が簡素かつ精度が高くなり、可視化や解析の結果も明解になります。顧客分析、経済動向把握、社会ネットワーク解析、センサデータ解析などで、表層には現れない深い意味が見えるようになり、データ利活用の活性化と新たなサービスやビジネスの創出を通じ、日本のIT産業の基盤強化につながります。

CREST ビッグデータ時代に向けた革新的アルゴリズム基盤
加藤 直樹
関西学院大学教授
プロジェクト概要
今世紀に入り注目を浴びているビッグデータは、そのデータ量の膨大さ故に、その基礎となるアルゴリズム理論に根本的な変革が迫られている。例えば、これまでは多項式時間アルゴリズムならば「速い」アルゴリズムであると考えられてきたが、ペタスケールやそれ以上のビッグデータに対してO(n^2)時間アルゴリズムを直接適用するだけでは、計算資源や実行時間などの点で大きな困難に直面する。少なくとも線形時間、場合によっては劣線形時間や定数時間アルゴリズムが求められている。
本研究では、その変革を支える劣線形時間パラダイムを提唱し、ビッグデータ用のアルゴリズムとデータ構造、およびモデリング技法を開発し、ビッグデータ時代に向けた革新的アルゴリズム基盤を構築する。

津田 宏治
CREST 離散構造統計学の創出と癌科学への展開
津田 宏治
東京大学教授
プロジェクト概要
ビッグデータから、ある現象に関する原因究明を行う際、統計的手法が多く用いられますが、その結果の信頼性に関しては、なんの評価値も与えられない場合が多く、誤った結果により損害が発生することもあります。本研究では、離散数学と、従来の統計科学を融合した離散構造統計学を創出し、原因究明精度の飛躍的改善を達成します。国内三カ所の有力がん研究機関と連携し、開発した新統計手法を利用して、新生児5000人に一人の高確率で発症する小児がんである神経芽腫の原因究明に挑戦します。

松本 裕治
CREST 構造理解に基づく大規模文献情報からの知識発見
松本 裕治
奈良先端科学技術大学院大学教授
プロジェクト概要
科学技術文書の急激な増大により、専門家にとっても最新の研究成果や研究動向を把握することが困難になっています。言語解析技術や文書解析技術を深化させ、大規模な専門分野文献の記述内容の解析技術の実現を目指します。生命科学、物質科学、脳神経科学、法律などの専門家との協働により、内容理解に基づいた文献の検索や内容の要約、新たな知識の発見や研究動向の把握を支援する総合的な技術環境を構築します。

CREST 大規模複雑システムの最適モデリング手法の構築
岩田 覚
東京大学教授
プロジェクト概要
モデル化は、数理的手法による現実の問題解決や現象の解明に不可欠な第一歩ですが、生命現象や社会現象の様に支配法則の不明確な対象を扱う際には、同じ現象に対しても、多数のモデルが考えられます。本研究では、生命現象におけるネットワークや電力システム、交通システムを題材に、離散数学・最適化分野における最新の知見を駆使して、多数のモデルの中から最も適切なものを効率的に選択する体系的な手法の創出を目指します。

CREST ソフトマター記述言語の創造に向けた位相的データ解析理論の構築
平岡 裕章
東北大学 材料科学高等研究所教授
プロジェクト概要
本研究チーム(CREST TDA)ではトポロジー、表現論、確率論、統計学を融合させた位相的データ解析(Topological Data Analysis: TDA)手法を開発し、データ科学における新たな基盤技術を構築します。数学的手法の中心はパーシステントホモロジーと呼ばれる概念であり、データの「形」を定量的に記述する4つの理論を確立します。
1. パーシステント逆問題理論
2. 一般化パーシステント加群理論
3. ランダムトポロジー理論
4. 位相的統計理論また、本手法をソフトマターの構造解析へ応用し、高機能ガラス材料設計や、疾患関連タンパク質のフォールディング構造解析といった挑戦的基礎研究を実施します。

CREST 機械学習と最先端計測技術の融合深化による新たな計測・解析手法の展開
鷲尾 隆
大阪大学 産業科学研究所教授
プロジェクト概要
計測技術は科学的探求の基盤であり、様々な研究分野で用いられています。しかし、これまではハードウェアによる計測情報処理が中心でした。一方現在では、情報科学や統計数理の分野において、機械学習などの新しい解析処理の方法論が急速な発展を遂げています。
本研究では、最先端の計測・デバイス技術と融合した新たな機械学習技術を確立・深化し、従来限界を超える現象・精度・機能の計測実現を目指しています。特に計測過程を反映した機械学習手法、複数情報源統合推定手法、データ特徴量抽出手法、事前知識を活かす少数データ推定手法などを開発しています。さらに、これらを活かす具体的問題として、先端的ナノギャップナノポアによる高効率、低コストな新DNAシーケンシング技術や新しい嗅覚センシングデバイスを用いた嗅覚センシング技術などの先端センシング技術へ計測指向の機械学習を適用し、従来にない新しいセンシング性能や機能の実現に取り組んでいます。

佐藤 真一
CREST 未知事物検索・認識基盤によるメディア消費者の体験・行動センシング
佐藤 真一
国立情報学研究所教授
プロジェクト概要
放送映像・SNS・ライフログ等の動的に変動するメディアから顕著な変化やトレンド等を検出する未知事物検索・認識技術を開発し、人々が放送映像やSNSからどのような情報を読み取っているのか、それを受けてどのように行動したのかを観測する基盤を構築します。これにより、新商品等の新たなトレンドの早期検出、購買行動を引き起こす効果的なマーケティング戦略の解析、人々を人道的行動に駆り立てる仕組みの解析等を目指します。
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